『うつほ物語』ビギナーズクラシックス 角川文庫

久しぶりに本についてのブログ。最近は視力低下のため文字が見にくくて、読書量が減っている。面白いミステリーがあれば一気に読む「癖」はあいかわらずだが、コロナ騒ぎでもう3か月以上本屋に行っていないから、買い込んでいたミステリーは全部読んでしまった。

この本は前に半分くらい読んでいたが、登場人物のあいだの関係性がわからなくなり、頭がごちゃごちゃになって挫折した。今回は関係性は無視してその続きを読んだが、おもしろくて、そのまま最初に戻ってまた読み直している。

『源氏物語』より少し前に書かれ、大きな影響を与えたと言われている。平安時代の貴族たちが主人公だから、内容的にも似ているところがあるのかもしれないが、両方とも原作を読んでいないからわからない。この物語に心を惹かれたのは、「琴(キン)」と呼ばれる楽器の秘儀が親から子へと伝えられていくことが一つの軸になっているから。それに、「不思議なこと」がちょこちょこ起きるので、「伝奇小説」という分類に入れる学者もいて、昔、怪奇小説にはまっていた身としては見逃せない。

物語の軸となっているこの「琴」が「古琴」だったと考えられているのだが、異論もあるようなので、断定はできないのかもしれない。確かに、この本の表紙に描かれている楽器は琴柱があるから明らかに「箏」の方だし、挿絵(「奈良絵本 宇津保物語」より、という解説あり)の中の楽器も古琴にしては幅が広い気がするし、そもそもこの絵では地面に置いて弾いているから、古代は奏法が違ったのか(普通は机に乗せるか、膝に乗せて弾く)?と疑問も残る。

でも、ひとまずこの楽器は「古琴」だと信じて、本書(あらすじが原文抜粋とともにわかりやすくかかれている)を読むと、その音色の描写がすばらしくてワクワクする。何しろ、屋根の瓦が砕けて花のように舞い散ったり、6月中旬と言うのに雪が降り積もったりするのだから。いったいどんな曲を弾いたのだろう……と想像しながら読んだ。

このビギナーズクラシックス・シリーズは全20冊あるようなので、ほかの本も読んでみたくなった。学生時代は古典・漢文がすごく苦手だったけれど!

本当の『うつほ物語』は全20巻というし、第一古文は読めない! 現代語訳をさがすかなぁ……。

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