もう一つの小さな奇跡


これ、月です。

夜11時近く、窓に向かっておいてある古琴を小さな音で練習していると、ちらとカーテンの隙間から光が見えた。「えっ?」と思ってカーテンを開けたら、目の前にまばゆい光が見えた。白内障のせいか何でも3重(さんじゅう)に見えるので、とっさにはそれが何か認識できなかった。「月?」とは思ったけれど、この位置から見たことがなかったので、何度も見なおした。そして、月とわかってうれしくなって、部屋の光を全部消した。「月の光の中で古琴を弾きなさい」とだれかに言われている気がした。

でも、弦が見えない。それに、なんだかドキドキして指が動かない。暗譜していたはずのところも思い出せない。だから、しばらくぼんやりと月を見ていた。

今は、月はさらに高く上がっていて、左側には星も見える。すべてが3重に見えるのはすごくくやしい。でもきれい。とてもきれい。

思い出した、この月、別の角度から見たことがあった。何度も。悲しい悲しい月だった。今日の月は微笑んでいた。

(続報)後で調べたら、昨夜の月は月齢が16.9(満月が15)で、ほぼ満月だったことがわかった。あのまぶしさは満月の光だったのだ。そして、月の左側に見えたのは金星らしいことがわかった。当地はほぼ赤道直下で日本とは星の見え方が違うと思うけれど、日本語のサイトでは月の左側に明るく光る星は金星だと書いてあった。それにしても、眼鏡をかけても三重に見える私の眼で見えたのは奇跡。星をつくづく見るなんて、何年ぶりだろう!