この曲はまず曲名が少し複雑。現代の中国語ではai3nai3と発音するが、古琴曲の場合は昔の発音で、ao3ai3(アオアイ)と発音する。意味は舟歌、船頭の掛け声、櫓のきしむ音。私がびっくりしたのは、この言葉が日本語にもなっていて「あいだい」と発音するということ。まったく知らなかった! 古琴はいろいろなことを教えてくれて本当に面白い……。
この曲の楽譜が最初に登場するのは1549年に編纂された『西麓堂琴統』。その二年前に編纂された『琴譜正伝』に『漁歌』というのがあって、それから発展したものという説もある。そもそも、中唐の詩人、柳宗元(773-819)の『漁翁』という詩をもとに作られた、あるいは柳宗元自身が作ったという説もあるくらいなので、かなり古い曲であることは確か。
今に伝わる演奏譜は多種あるが、一番よく弾かれているのは『天聞閣琴譜』(1876)に収録されている8段構成のもの。管理人が練習しているのもこの楽譜をもとに菅平湖さんが打譜したものだが、超・超・超難曲。とくに左手が、これまでに習ったことのない動きをする! また、はじめのほうは、のんびりと櫓をこいでいたのに、川の流れに乗ったのか、後半が(管理人にとっては)超高速に。柳宗元の詩の最後の二行は、「空を振り返りながら流れの中ほどを下る、岩壁の上で無心に雲が追いかけごっこをしている」といった意味のようなので、それまでのギ~ッチラ、ギ~ッチラというこぎ方ではなくなってきた?
いろいろな意味でおもしろい曲なので、書きすぎました。
管理人が習っている先生の先生、戴老师の演奏をお聴きください。
(追記)昨日レッスンで最後までチェックしてもらった! Z先生はこの曲が『漁翁』に由来しているという説には懐疑的。ましてや柳宗元が作ったなんてことはありえないと言っていた。そりゃそうだよなぁ~と納得。でも『漁歌』がもとになっている可能性はあるという話だった。いずれにしても500年近く前にあった曲。うーん、これまで習った曲で一番昔の曲ってどれなんだろう? はっきりしないのだろうけれど、調べてみたくなった。(2019/05/17)