『唐代の人は漢詩をどう詠んだか』岩波オンデマンドブックス


李白は自分の詩をどう詠んでいたのだろう?という素朴な疑問から、唐の時代の発音が知りたくて、ウェブをサーチしていた時に、写真の右側の『唐代の人は漢詩をどう詠んだか』という、そのものずばりの本を見つけた。「オンデマンド」という新しいやりかたの出版方法をとっている本だった。ソフトカバーでシンプルな装丁だけれど、普通に売っている本と変わりがない。

ところが、シンプルな外観に隠れた内容がすごかった! 「音韻学」という学問を使って、昔の人の発音を再現するという、言葉と歴史が好きな人にはたまらない話題! たとえば、杜甫の有名な詩『春望』の出だし部分、「国破山河在」、書き下し文でいうと「国破れて山河あり」、現代中国語での発音は「guo(2)po(4)shan(1)he(2)zai(4)」が、なんと「クォッ(ク)・プゥワ・シァン・ガア・ジァイ」みたいな発音になる。字で書くと、ちょっと似た発音に見えるかもしれないが、実際は「ウッ」と詰まったり、「ハッ」と強い息と一緒に出したり、唐の時代の人たちの発音はかなり強烈。聴いた感じが福建語や、台湾語に似ているかもしれない。

同じ著者による左の本は、発音だけでなく文字についても詳しく書かれていて、これも非常に興味深い。

奈良や平安の時代の日本語の発音も今のものとはずいぶん違っていたらしい。どんなだったのかな・・・と興味がふくらむ。

(続報)唐の時代の中古漢語で、李白の『関山月』という詩をもとに作られた琴歌(古琴の弾き語りの曲)を歌ったものをYouTubeで見つけました。それに関するブログ(中国語)と動画へのリンクはこちらからどうぞ。(20191101)

『中国結一本全』中国華僑出版社


中国結びの本。428ページもあって、3cmくらいの厚さがあるのに2000円くらいですごくお得感のある本だったから、思わず買ってしまった。これを見て、旧暦のお正月(今年は2月5日)のための飾り物を作ろうという、いつものように短絡的なアイディア。そのおかげでたいそう苦労をするはめになった!
本は材料、用具、小物の説明から、基本の結び方が図解入りで始まる。なかなか丁寧だが、問題はその図にイラストではなく写真が使われていること。色の違う二本の紐が使われているので、どちらの紐が上か下かが一見わかりそうな気がするが、問題は同じ色の紐が交差する箇所。クローズアップされていても、判別がむずかしい。このあと入手した『結び大百科』という日本の本は、図版がイラストで、そのあたりがはっきりわかるようになっていた。もちろん説明も日本語だから、そのせいも大いにあるが、わかりやすい。とはいえ、いずれにせよ、いざ取り掛かってみると簡単にはいかなかった。結局、中国語版を見て三回、日本語版を見て一回失敗。最後は、中国語版の説明をていねいに読んで五回目に挑戦することになった。その結末は次回のブログで! 折り鶴と組み合わせた正月飾りも作ってみました。

『大人のおりがみ手紙』大創出版


百円均一のダイソーで売っている折り紙本。少し厚手の折り紙にいろいろな図案が印刷されていて、その一部に手紙を書くための線の引いてあるスペースがある。そこに手紙を書いてから、手順に従って折ると、表紙にあるような日本っぽいものができあがるという仕掛け。紙に図案がすでに描かれているというのは、折るだけで作る折り紙としては反則だよな~と思いながらも、こけしを折ってみた。


悪くない。大きいほうが百均本の紙を使って作ったもの、で、小さいのは普通の折り紙を四つに切って折ってから、顔とか着物とか書いた。悪くない。外国人へのおみやげとかにいいかもしれない、と一瞬思ったが、すぐに思い出した。折り紙になじみのある日本人は、山折りとか谷折りとかすぐイメージがわくし、きちっと端をそろえて折ることができる。以前、外国人に折り紙を教えようとしたとき、そもそも、きちんと二つに折る、というところからできなかった。なぜそうしないと出来上がらないのかがわからないようだった。特殊な外国人だったのかもしれないけれど、ともかく、折り紙は几帳面な性格でないとむずかしいと思う。だから、「几帳面な性格の外国人へのおみやげに最適!」としておく。桃太郎とか、だるまとか、日本についての話の糸口にもなりそう。

折り紙についてはほかにもブログを書いています。ぜひ当ウェブ内で「折り紙」で検索してみてください。(20190830)

『コンピューターってどんなしくみ?』誠文堂新光社


「子供の科学★ミライサイエンス」というシリーズのうちの一冊。小中学生を対象に科学をやさしく説明するシリーズ。前に当ブログ紹介した『10代からのプログラミンンぐ教室』よりもさらに文章もやさしく、さらにわかりやすい図解付きだから、文系シニア女子にも楽に読める! コンピュータの中身のハード的な構造から、それぞれの部分の役割、コンピューターの基本原理である二進法など、ふむふむと納得。インターネットの歴史とか仕組みも、へえそうだったんだ! ただし「プロトコル階層構造」というのと「暗号で情報を守る仕組み」は何度読んでもよくわからなかった……。
これから何か新しいことーーとくに、苦手な理系のことーーを学びたいと思ったら、こういう子供向けの本がぴったりかもしれない。このシリーズには『プログラミングでなにができる?』という本もあって、少し調べてみたら、実際にプログラム言語を使って簡単なプログラムを作ってみるらしい。怖いもの見たさでちょっと読んでみたい気がしないでもない。

『稻草人的手记』から『見守る天使』(抄訳)

翻訳権の問題があるから、全文を訳すことはできないけれど、とても好きなお話なので抄訳を紹介したい。若くして亡くなった、三毛という台湾の女流作家さんの小品。この作品の収められた本は訳されていないけれど、別の本は邦訳があるーー『サハラ日記』(筑摩書房)。

見守る天使

12月も20日を過ぎたころ、近所の坊やが厚紙で作った天使をくれた。
「でも本物じゃないよ。天使は本当はいないんだ」
「あら、いるわよ。私にだってずっと前に二人いたわ」
「いまはどこにいるの?」
「遠い空の上」
「天使と一緒だったのに、なんで離れ離れになっちゃたの?」
「その時は、天使が守ってくれてるって気が付かなかったの」
「天使は子供を守るの?」
「そうよ。子供のことが好きすぎて、泣いちゃうこともあるのよ。それでもハンカチを出して涙をふくこともできないの。翼を下ろしたら子供を守れないから。
でも、子供は大きくなると天使に言うの。『いかなくちゃ。でもついてこないで。そういうのイヤだから』」
「天使はどうするの?」
「何も言わずに喜んで送り出す。それから急いで、子供が見えるように、うーんと高いところまで飛んでいく。子供がずっと遠くに行って見えなくなったら、家に帰って泣くの」
「子供は天使のこと思い出さないの?」
「思い出すわよ。でもしばらくあとになって、天使のもとに二度と戻れなくなってから思い出すの」
「なぜ戻れなくなるの?」
「それは、自分にも翼が生えてくるからよ。翼の下には新しい子供がいて、もちろん泣きたくなることもある」
「天使になるのってつらいんだね」
「そう。でも天使にとってはそれが幸せなのよ」
「おばさんに二人の天使がいたのなら、なぜずっと一緒にいなかったの?」
「さっき言ったでしょ。戻れなくなるまで、二人が天使だったってことに気が付かなかったのよ」
「よくわかんないな」
「大きくなったらわかるわよ。いつかあなたのパパとママが……」
「パパもママも仕事で忙しくて、ぼくたちの相手をしてくれない。全然つまらないよ!」
通りの向こうから大きな声がした。「トミー、ご飯よ!」
「ほらね、一日中、ご飯、ご飯って、本当にいやになっちゃう」
トミーはぶつぶつ言いながら家に向かって走り出した。
「ぼくにもそんな天使がいたらなあ! でもそううまくはいかないよね」
トミー、今のあなたにはまだわかっていないのよ。で、いつかわかったときには、もう遅すぎるの。

『思い出の昭南博物館』紀伊國屋書店


本の帯にはこう書かれています。「この本は暗闇に光る灯火だ。戦争で分かたれた人々が、手を取り合って、世界遺産となる植物園を守り、後世に伝えた」シンガポールの外務省のトミー・コー教授による推薦の言葉です。読んでみて、本当にこの言葉通りだと感じました。日本軍によるシンガポール占領から終戦まで、戦火のもとで、一部の日英の科学者たちがいかにして、のちに世界遺産となる植物園と、歴史の遺物を多数所蔵する国立博物館を守ったのかを綴ったドキュメンタリーです。人間は愚かなこともたくさんするけれど、どんな状況下にあっても大切なものを守るために純粋に戦う、すばらしい魂を持った人達もいるのだと知って、救われた気がします。戦争のさなか、シンガポールにいた百歳の友人にこの本を贈ったら、知っている名前や地名がたくさん出てきて、とてもなつかしく読んだ、と喜ばれました。

『まんが 中学故事成語・漢文』Gakken


Gakken(学研)から出ている『まんが攻略BON!』シリーズの一冊。中学の漢文の時間にどんなことを習ったのか、思い出したくて読んでみた。すごい! 中学でもう王維の『元二の安西に使ひするを送る』を習っていた!(この本で第三章に入っているから、おそらく中学三年生くらいで習う位置づけなのだと思う)。

古琴で習った『阳关三叠』という曲はこの詩をもとに作られていて、歌詞も一部はこの詩のままだ。元二が誰だったかははっきりしないらしいが、王維の家族か親しい友人で、朝廷の命令で遠く西方に旅立つことになった人。別れを惜しむ王維の思いが込められたすばらしい詩だ。

中学高校時代、漢文は苦手だった。ほかの多くの学科もそうだったけれど、なんのためにやっているのかわからなかった。1000年以上も前のすばらしい詩人の魂の叫びを読んでいるのだという実感はまったくなかった。それが古代の中国語であるという認識すらなかった。惜しいことをした。

“The Stories Behind 101 Chinese Idioms” Sinolingua

久しぶりに本の感想文。この本は中国語の先生からお土産にもらった。中国語(英語対訳付き)の本。まだ読み切っていないのだけれど、レッスンで少しずつ読んでいるから、いつ読み切るかわからないので、先に紹介することにした。内容は、たとえば推敲、背水の陣、虎穴に入らずんば虎子を得ず、といった慣用句の由来。101の慣用句のうちよく知っていたのは、今あげた三つくらいだったけれど、あ、どこかで聞いたことがある…というのはほかにもあった。それになにより、由来となる歴史故事が面白い。孔子はもちろん、劉邦や項羽といった歴史的人物が続々と登場する。英語の対訳がついているので、辞書を引く回数が多少!減る。先生、いい本をありがとうございました!

『シェイクスピア・アンド・カンパニー書店』河出書房新社

最近読んだ本ではない。実は、半世紀近く前の本。表紙は日焼けしていて、本文の紙も外周が茶色く変色している。でも、私にとってとても大事な本。

著者は20世紀初頭にパリのオデオン通りに書店を開店した一人の女性。この書店にはジェイムズ・ジョイスやヘミングウェイ、ポール・バレリーといった名だたる文学者(といっても、むずかしい?純文学や詩は読めない私は名前だけしか知らない人が多い)が集まり、語り合った。表紙の写真は書店主のビーチと、彼女を支えたモニエ(通りの向かいに書店を持っていた)、そして『ユリシーズ』の作者ジョイスが店内で語らっている様子を写している。こんな本屋さんに行ってみたい!

この書店は第二次大戦中に閉店を余儀なくされたが、その後、1963年に、すでに別に書店を持っていたジョージ・ウィットマンによってその名を引き継がれ、今日まで至っている。

この二代目シェークスピア・アンド・カンパニー書店に関してもいろいろおもしろい話があって、何冊か本が出ている。ぜひいつか手に入れて読んでみたい。

下は1974.1.28付の読売新聞。解像度を落としてしまったので、本文が読めなくて申し訳ない。

『できた! ユニット折り紙入門』筑摩書房


本ウェブログに時々登場する、折り紙に関連したブログをもう一つ。本の帯にあるように「ユニット折り紙」と呼ばれるやりかた。一枚で折ったパーツをいくつか組み合わせて作る。この箱は四つの同じパーツを作って組み合わせる。かなり難しい。私は箱好きなのでいきなり箱から作ったけれど、もしかしたら平面的なものから始めるといいのかもしれない。目の前で制作過程を見られたら、もっと簡単なのかもしれないけれど、平面的な図だけだとなかなかうまくいかない。特にパーツを組み合わせるときに無理に入れ込もうとすると、折れてしまったり、「ほどけて」しまって、どこがどの部分だったかわからなくなったりする。かなり頭の体操になる。でも、根気のない人にはちょっと向かない体操。