三国時代魏の国の詩人、「竹林の七賢」の一人阮籍(げんせき)(210-263)が作った古琴曲。その成立には諸説ありますが、その一つによると――当時、魏国では政治が乱れ世の中には暗澹とした空気が蔓延していました。阮籍は政府に大きな不満を持っていましたが、政府批判などしたらすぐに殺されてしまうような状況です。そこで彼は酒を飲み、酔いつぶれ、酒の上でのたわむれ事のように装って、ひそかに不満をこぼしていた……。またもう一説には、自分が反政府分子としてとらえられるのを避けて、山にこもり、酒を飲み、古琴を弾き、歌を歌っていやなことを忘れるようにした、とも言われています。阮籍のこのような複雑な思いを考えると、繰り返される低音、全体的に感じられる不安定感、そんなものが大切な意味を持っているように感じられてきます。決してただの酔っ払いの曲ではないので、要注意!
下のリンクは動画ではありませんが、この曲の成り立ちを思いながらじっくりと聴いてみたい古琴大家の演奏です。